ひろくんの映画ブログ

映画好きの大学生。映画は2時間座っているだけで人生が変わるかもしれない。それが映画の魅力だと思っています。 「映画のこれなら誰にも負けない」ところをみつけるためにブログをはじめました。 基本、映画レビューですがたまにブックレビューや雑談が入ります。

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【映画レビュー】『アドアストラ』はなんだったのか?

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今年はブラピが熱い!

先日ブログで熱く語った『ワンスアポンアタイムインハリウッド』においてキャリア史上トップレベルのイケメン度を発揮していましたが、それから1か月も経たないうちに今回紹介する『アドアストラ』では渋い演技派のブラピを拝むことができるのです!

こちらがワンハリのブログになります。

お時間あれば一読お願いいたします。 

 

というわけで公開初週の日曜日に見てまいりました!

 

なんでこんな変わったSF映画なの?

 いやー、見ている途中から映画館でスマホの光が見え始め、一緒に見ていた弟は爆睡。。。。。

もうこの時点でオビワンばりに嫌な予感がしました。

 

早速、Twitterで【アドアストラ】と打てば、

2019/9/30時点 f:id:hiro12242377:20190930113152p:plain

 、、、、、、、。

 

いや、これでも良い方で公開してすぐは【つまらない】も候補に挙がっていましたらね。笑

 

 

とはいえですよ、

自分はこの映画を観た時にSF映画らしくないところが非常に楽しめました。

 

地球の外側に希望を見出すSF映画の醍醐味を否定して、むしろ宇宙の中の地球、個人で言うところの家族という最小単位のスケールに話を帰着させるというかなり変わった映画であることは間違いありません。

 

ただ最初はこれをSF映画として捉えてるから変わっていると感じただけで、

1週間かけてジェームズグレイ監督の監督作品を全て見て、経歴や1作品ごと情報を調べていくと『アドアストラ』はめちゃめちゃジェームズグレイ作品らしい!と感じる事ができ、決して単なる変なSF映画ではないという事が見えてきました。

 

先にいうと長編デビュー作でヴェネチア映画祭で銀次師賞を受賞し、そこから1作品意外は全て三大映画祭のコンペ入りしている実力派です。

 

というわけで今回のブログは

 


・ジェームズグレイってどんな人なのか?

・デビュー作からアドアストラ へ

 


このように彼のキャリアとフィルモグラフィーから作家性の一貫してる部分と、変化していった部分を見ていく事で最新作の位置付けを考えていこうと思います。

 

ジェームズグレイ監督ってどんな人?

まずはご尊顔を。

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IMDBより)

 

<映画監督になるまで>

1969年4月14日にクイーンズで生まれ、今年で50歳、ロシア系ユダヤ祖母がアメリカへ移民としてきたのがルーツです。

この点が彼のフィルモグラフィーの軸にあるのでキーワードになります。

 

彼はもともと画家を志していましたが、フランシスフォードコッポラなどの影響を受けて映画監督を志すようになり、南カリフォルニア大学に入学します。

在学中の1991年に製作した12分間の短編『cowboy & angel』がプロデュサーのポールウェブスターの目にとまり称賛を受けます。

(ポールウェブスターについて調べると『イースタンプロミス』や最近だと『ゴッズオンカントリー』などがありますが、1991年当時はまだプロデューサーとしては駆け出しという感じです。)

 

これによりポールウェブスターとともにデビュー作品『リトルオデッサ』の製作につながります。

 

 

<『リトルオデッサ』(1994)>←ヴェネチア映画祭銀獅子賞受賞

(↑画像クリックでAmazonのリンクに飛びます。

特に『リトルオデッサ』はTSUTAYAでも非常にレアな作品です。)


Little Odessa (1994) Trailer

大学時代に出会ったポールウェブスターとともに予算を集めるのに2年、クレジットカードで決済で完成させたデビュー作です。

今作でまさかのヴェネチア映画祭で銀獅子賞を受賞する名誉を手にしました。

 

まず主演のティムロスの演技が素晴らしいのですが、あの『ターミネーター2』のジョンコナー役で知られているエドワードファーロングがその弟役で出ています!

ちなみにエドワードファーロング的には自身の出演作の中ではこれが一番だそうです。

 

 

そしてこれは一貫したジェームズグレイ作品の特徴ですが”ハリウッド映画らしくない”という点がデビューの時点で如実に出ています。

 

上映時間98分のうちエンドクレジットを引いた本編が92分なのですが、そのうち454ショットしかありません。つまり1ショットにつき約12秒もあることになり、1990年代に作られたハリウッド映画が平均で1ショットにつき3~6秒と考えれば明白です。

 

タイトルにあるリトルオデッサはロシア系、ウクライナ系の移民が多い地区のことでウクライナ最大の港湾都市オデッサが名前の由来となります。

これはロシア系なもののクイーン生まれの監督が、今後も自身のルーツに近い人々の生活を描く、というより探求(自分探し)していくキャリアの出発点と言えます。

 

これはある殺し屋の仕事を行ったことから家族、街から追放されていたティムロスが街に戻ってくるところから始まります。

この映画では立場の違いから兄の帰郷を受け入れらない父親の姿を描きながら、それでも家族愛、兄弟愛がある弟を対称的に描くことで血縁が持っている不思議な強さを表現しています。

この血縁に重きをおく点も今後も一貫しており、『アドアストラ』にも通じる点とも言えます。

 

 

<『裏切り者』(2000)>←カンヌ映画祭コンペ入り

(↑画像クリックでAmazonのリンクに飛びます。)


裏切り者 予告編

 

 基本的にジェームズグレイ監督の初期三作はクライム映画にあたると思います。

今作では自分の父親が関わった実際の汚職事件をテーマにしています。

 

一点補足ポイントをあげると共同脚本がマッドリーヴスという点です。

クローバーフィールド』より前のフィルモグラフィはあまり知られて無い気がします。

 

仲間を庇って捕まったマークウォールバーグ演じる主人公が出所するところから始まります。

彼はホアキンフェニックス演じる悪友とつきあい、大きな汚職と談合が渦巻く世界にはまっていくのですが、それに関係している殺人事件の濡れ衣を着せられてしまうのです。

彼は助けを叔父に求めますが叔父も業界の立場的にそれが難しく、彼の復讐が描かれます。

 

この映画でも『リトルオデッサ』同様に監督のルーツを探求するという超個人的な作品でありながら、自分の置かれた”社会的な立場”と”家族”という中で迷う人々の物語を描いているのが特徴といえます。

 

そして今作も全体のテイストがハリウッド映画らしさがなく、

監督はヌーヴェルバーグの巨匠クロードシャブロル監督(『いとこ同志』でベルリン映画祭金熊賞)の作品を意図して作ったようですが、その点はカンヌに出品した際は賛否が分かれてしまったそうです。

 

 

<『アンダー・カヴァー』(2007)>←カンヌ映画祭コンペ入り

 (↑画像クリックでAmazonのリンクに飛びます。)


映画『アンダーカヴァー』予告編

 

今作ははっきりいうと『リトルオデッサ』のグレードアップ版といえます。

しかも座組は前作『裏切り者』と同じというのもポインかと。

 

警察一家、父親ロバートデュバル、兄マークウォールバーグという中でグレたホアキンフェニックスという構図は、『リトルオデッサ』のように一つの家族の中で法を順守する者と背く者がいるという点と重なります。

 

途中でカーチェイスシーンがあったりなど、

クライム映画だった初期三作の中では今作が一番楽しめました。

 

そして自分の所属している”社会的な立場”よりも”家族”の方が大事なんだ!と非常に明確な答えを出しているあたりも、監督の中で一つの到達点といえる思います。

 

ここがキャリアを俯瞰してみたときの大事なポイントになりますが、

・これまでは自身の父親や、男性を主軸にしながら作品を作ってきました、

 

・次回作からは自身の祖母、女性像について探求していくことになります。

 

 

<『トゥー・ラバーズ』(2008)>←カンヌ映画祭コンペ入り

 (↑画像クリックでAmazonのリンクに飛びます。)


Two Lovers - Official HD Trailer Starring GWYNETH PALTROW and JOAQUIN PHOENIX

 

前述したとおり監督のキャリアの中で一つの到達を迎えると、次のエリアへと進みジャンルは恋愛ものと大きく方向転換しました。

 

まず原作はドストエフスキーの『白夜』という点が面白くて、もともと監督のルーツにあるロシアの作家をチョイスするあたりも監督らしいですよね。

同原作は何度も映画化されており自分はルキノヴィスコンティ監督の『白夜(1957)』しか見ていないのですが、ダンスシーンなどは意識していると思われます。

 (↑画像クリックでAmazonのリンクに飛びます。)

今作と次作の『エヴァの告白』はイタリア映画を意識ているようになるのもみどころかと思われます。

 

正直、この映画はあまり楽しめませんでした。

ホアキンフェニックス演じる主人公が抱える躁鬱病の不安定な感情が巧く表現されているところは楽しめましたが。

 

 

ただ今作で注目すべき点は、

ヒロインを務めるグウィネスパルトローが自分のキャラクター像、脚本の制作に関わっていることです。

彼女は監督の作品が男らしすぎると意見をしたそうで、そこから”女性の心理”についてアドバイスを求めています。

 

実はここで学んだことが自身の祖母について探求した次回作『エヴァの告白』に繋がっているのだと自分は考えています。

 

 

<『エヴァの告白』(2013)>←カンヌ映画祭コンペ入り

 (↑画像クリックでAmazonのリンクに飛びます。)


映画『エヴァの告白』予告編

 

先に言っておくと邦題が微妙です。。。。

でも映画は面白かったです。

たしかにエヴァは告白するのですが、そこが映画の山場でもないんですよね。

原題が『Immigrant』(移民)のようにまさしく移民を描いた映画です。

 

今作の時点で監督は自身でもベストだと認めるように、

アンダーカヴァー』からさらに成熟した映画へと到達したと感じました。

 

なぜかというと今作はまず初めて女性が主人公の作品です。

前述したグウィネスパルトローと女性のキャラクターを探求した経験があり、今作でも同様に主演のマリオンコティヤールと役について議論したそうです。

ちなみにその際も監督に「嫌なやつ!(He is jeark!)」と言いながらパンを頭に投げたそうです。笑

 

男らしい作品を得意としてた監督がここにきて、女性の複雑な心理を描くようになっている点も一つの到達点と言えるでしょう。

 

さらに、これまで男性を主人公にしながら、自身のルーツの特に父親を探求したのに対して、今作では自身の祖母を探求しています。

 

最初に述べましたが、

監督の祖母は主人公エヴァのようにアメリカに移民としてやってきました。

劇中のバナナの食べ方を知らない場面は実際の祖母のエピソードが元になっているようです。

 

ちなみに物語の冒頭がエリス島から始まるのは監督に影響を与えたコッポラの『ゴットファーザーPART2』を意識しているそうです。

 

さらに前作の様にイタリア映画ぽさは増し今作はフェデリコフェリニーニ監督の『道(1954年)』を意識した展開があります。

途中でマリオンコティヤール、ホアキンフェニックス、ジェレミーレナーの三角関係は前作『トゥー・ラバーズ』のように思えますが、監督は主人公エヴァジュリエッタマシーナ(『道』の主演女優)を意識したようなので意識しているのは間違いないと思われます。

 

このようにデビュー時から続くハリウッド映画らしくない部分は健在で、

今では悪名高いプロデューサーのワインスタインはもっと『サウンドオブミュージック』ぽくしてくれと注文したようですが、監督は一貫して自分の作家性を貫き通しました。

 

物語もアメリカにやってきた姉妹が、

結核で隔離された妹会うために波乱の人生を生きるというもので、

実はそもそもアメリカに来たのも親戚がいたからなのですが、そこで一悶着が起きてしまいそこで住めなくなってしまうのです。

その途中に三角関係やら事件やらが起きるのですが、身を落としてもエヴァは妹と再開するという、"血縁の強さ"によって支えられていました。

 

つまり今作でも家族を最上級に大切なものとして描いており、貫しているところですよね。

これは完全に人自分の印象ですが、この家族を血縁ではなく、擬似家族的な物で絵がけば、近年の映画祭のトレンドですので賞とかある気がします。

 

<ここで一旦経歴のまとめ、そしてPLAN Bとの出会い>

監督は常に物語を語りながら、自分の生まれ育った街や、ロシア系移民などの自身のルーツを探求してきました。

特に『リトルオデッサ』〜『アンダー・カヴァー』では男たちを描きながら、監督は自身の父親を探求し、

『トゥー・ラバーズ』『エヴァの告白』では女たちを描きながら、監督は祖母について探求しました。

 

そしてどちらの作品も今置かれてる"立場や環境"よりも"家族"を選択するという答えを出しているのがキーポイントと言えます。

 

しかし、これまであげた作品全て三大映画祭のコンペ入りを果たしているものの賞に輝いたのはデビューの『リトルオデッサ』の銀獅子賞だけで、たしかにジェームズグレイ監督は"映画祭が育てた監督"に分類されるでしょうが、まだ最高賞というわけでもないんですよね。

 

そこで一つの転機としてブラッドピットの制作会社PLAN Bが監督にアドベンチャー映画の企画を打診します。

それが2008年の事ですので『トゥー・ラバーズ』より前か同時期となるのですが、監督は自らのキャリアからしてアドベンチャー映画の制作を渋り一旦保留になります。

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ですが『トゥー・ラバーズ』と『エヴァの告白』との間に、『アドアストラ』(正確にはその原型となるSF映画)のストーリーを練っていたと監督は認めているので、

 

このあたりから

”自分の描いてきたテーマを他ジャンルでも応用できるのではないか?”

【ハリウッド映画らしくないハリウッド映画】の方向へと向かっていくきっかけとし、PLAN Bの打診が大きなきっかけになったと思われます。

 

この『アンダー・カヴァー』の時点でアドベンチャー映画の企画をオファーするPLAN Bのチャレンジ精神に溢れた戦略にも驚かされます。

 

 

実はここでそのアドベンチャー映画の企画はパラマウントの撤退などの難航、さらに『トゥー・ラバーズ』と『エヴァの告白』が興行的に振るわなかったことから監督がスランプに陥るという事態に。

 

 

<『ロスト・シティZ 隠された黄金都市』(2016)>←ベルリン映画祭特別招待作

 (↑画像クリックでAmazonのリンクに飛びます。)


ロスト・シティZ 失われた黄金都市

 

少し話が逸れますがこの原作のデヴィッドグランという方は今後大注目の作家で、

以前のブログでも紹介した傑作『さらば愛しきアウトロー』を手掛けたり、今後は他作品がスコセッシによって映画化されることも決まっています。

こちらがそのブログです。

www.hiro1224movieblog.com

 

 閑話休題、トラブルが山積していたこの映画の企画でしたがパラマウント撤退の件はアマゾンとブリーカーストリートにが配給と上映を行うことで解決、主演の予定だったブラッドピットがスケジュールの都合で出れなくなり、イギリス人から探すことになり、カンバーバッチは妻の妊娠で辞退、結果としてチャーリーハナムに決まりました。

 

スランプに陥っていた監督でいたが、

2015年から脚本の執筆を開始し、さっそく制作にあたって大きな決断を行いました。

 

それが

ジャングルへ行こう!

というものです。

 

物語はインディジョーンズのモデルになったパーシーフォーセットの伝記で、南米にあるとされた古代文明Zを探すために生涯を捧げた男の物語となっています。

それには未経験でもジャングルに行ってやるしかない!という監督の一念発起の思いが感じられます。

 

『アドアストラ』を見た時にコッポラの『地獄の黙示録』を感じた人は多いと思いますが、

もともと監督を志すきっかけになった存在ですし、『エヴァの告白』でも『ゴッドファーザーPART2』を意識していました、

そして今回はジャングルということで地獄の黙示録』を監督したコッポラに手紙でアドバイスを求めていたのです!

 

そして憧れのコッポラからの返事が、、、、、、!!!!

「Don't go.」

まさかの「行くな」のたった二言!笑

 

これには裏話がありまして、

実際にコッポラが『地獄の黙示録』を撮る前にロジャーコーマンにアドバイスを求めた時の返事が「Don't go.」だったのです。

 

こうやって謎のしきたりみたいに映画監督間で受け継がれていったら面白いですよね。

 

でもこの映画もなかなか変わった作品で、日本では【未体験ゾーンの映画たち】の時に公開されました。

 

楽しい冒険ものなのかな?

と思うと、全く違います。

 

古代文明を探すために家族なんかそっちのけにして生涯を捧げた人物の狂気が描かれているのです。

最初は軍人だから戦地に行くのが本望だったのに、南アメリカの測量に行かされるのですが、それによって父親の汚名を返上できると上官に言われるのが彼の同期の中心にあります。

もちろん当時のイギリスの階級社会という側面もありますが、彼の狂気じみた執着心の根源には自分の”家族”がある、ここがすごくジェームズグレイ作品らしいところだと感じました。

 

しかも探検隊で負傷者が出ても「じゃあ帰れ」と碇ゲンドウばりに切り捨てていくシーンや、食人族に遭遇する場面など、こちらが期待しているハリウッド製アドベンチャー映画のかけらもありません!笑

 

これって『アドアストラ』のトミーリージョーンズ演じる父親と同じなんですよ。

彼は仲間が死のうが、異星人とのコンタクトのために身を捧げていましたよね。

もちろん厳密に観ていけば違いがありますが。

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この家族よりも仕事を選ぶいわゆる男くさい映画を撮るのは初期のジェームズグレイ作品にみられる点ですが、

きちんと

”女は家で待っていろというのか?”

“夫婦ともに研究したのに、発表会の檀上は女人禁制とは不当ではないか?”

と意義を唱える場面があり、男女の描写が非常にバランスが取れている点は『トゥー・ラバーズ』と『エヴァの告白』の経験を感じます。

 

そしてジャングルに進んでいくとともに、仲間が減りながら主人公の深層心理がだんだんと描かれていくくだりはがっつり『地獄の黙示録』なのですが、

 

一点だけ『アドアストラ』と決定的に違う点があると感じました。

 

それは父と息子の関係です。

 

今作では主人公の息子をトムホランドが演じているのですが、

最初はずっとジャングルにいる父親を憎んでいるようですが、次第に自分も父親の様になっていくんですよ。

 

これは『アドアストラ』のブラッドピットも同じですよね?

火星を経ったあとのひと悶着あたりから、「結局、父親と同じじゃん」と思えてくるわけです。

そこから決別につながっていくわけですが。(詳細は後ほど)

 

でも大きな違いとして、

トムホランド古代文明の捜索を諦めた父親に対して「一緒に探しに行こう!」となり、そのままジャングルへと消えていくんですよ。

 

この映画は父と子で観れば熱い絆のように思えますが、

永遠に帰りを待つ、というより残酷かつ強制的に待たされる母親の悲しみをもって映画が終わるんですよ。

 

この後味の悪さに対して、

もう少し別のやり方もあったのでは?という答えがまんま出ていたのが『アドアストラ』の最後だと思われます。

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『アドアストラ』はなんだったのか?

ヴェネチア映画祭コンペ入り

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映画『アド・アストラ』予告編 9月20日(金)公開

 

さあ、監督の大学時代から少しずつ映画が繋がりを持ちながら変化していくことを書いてきて最新作『アドアストラ』について結論を導いていこうと思います。

 

前述した通りこの作品は『ロストシティZ』で描いたことを再考して、さらに別の答えを提示している作品です。

前からコッポラリスペクトはあり、前作でそれは強くなりましたが今作は完全に宇宙版『地獄の黙示録』になっています。

映画館で驚いたのがまさかの宇宙で猿に襲われるのは想像の斜め上を行く描写でした。これは『地獄の黙示録』のトラに襲われるところのオマージュでしょうか?

ジャングルから宇宙へと舞台は変わったのに『地獄の黙示録』色が強くなっているのが面白いですよね。

 

ちなみに皆さん「前半は最高だった」というように、

監督は『ロストシティZ』の時のインタビューで「映画で大事なのは最初の30分、ストーリーのあらゆる面でディテールを確立する必要がある。」と述べていたので、今作も前半戦のテンポの良さは万人が楽しめる作りになっていたと思います。

 

 

まずはある一つの大義に取りつかれた父親が遠くに行く、

息子は成長し父親のようになりその地点を目指す。

ここまでは『アドアストラ』と『ロストシティZ』は同じです。

 

ただ『ロストシティZ』は父親とともに息子もさらに遠くに消えて行方不明になりますが、『アドアストラ』は息子は父親のようになる(同化)しながらも最終的には「家に帰ろう」となるわけです。

 

常に監督は『アンダー・カヴァー』でも『エヴァの告白』でも尊い家族を選択する答えを出していましたが、

今作でも【どんな大義があっても待つ者の傍にいてあげる事が大事ではないのか?】と明確な答えを打ち出してきました。

 

しかもそれをSF映画でやってのけるあたりがジェームズグレイ作品特有の【ハリウッド映画らしくない】ところです。

やはりSF映画といえば『2001年宇宙の旅』や、それの影響を受けた『インターステラー』のように、地球のその先へ希望や可能性を見出していました。

 

でもあえて今作では宇宙という広大な空間にそんな希望なんてない、月に気軽にいけるようになっても領土問題で人類は紛争を繰り広げているわけです。

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前作では古代文明に親子が辿り着けたのかは不明瞭ですが、

今作ではそんな希望に取りつかれて家族をほったらかしにするならば、全然かっこよくない!

人は大義ではなく近くにいる友人や家族を選択するべきなのだと。

 

SF映画的な魅力を否定しているように思えますが、

実は一つの家族というミクロな視点を、地球または宇宙というマクロな視点を用いて対比させている点はSF映画的な魅力と言えると思います。

ただそれをハリウッド映画でブラッドピット主人公の大作SF映画でやってしまうのがジェームズグレイ作品のぶれないところですよね。

 

まとめ(おわりに)

こうやって見てくるとジェームズグレイ作品は常に2~3作品ごとに共通したテーマを追い求めて、そこに家族が大事だと納得ができるとまた別のテーマや視点を描いていることがわかりました。

そうなると『アドアストラ』は『ロストシティZ』とセットになって、同じテーマを描きながら”それでも家族が大事なのだと”自分の中で納得ができていることがわかります。

 

ですからこの流れで考えると監督の次回作は同じテーマはやらない気がするんですよね。

もっとまた別の視点から家族の重要性を切り込んでくるきがします。

 

少なくともどんな企画を渡されても、自分の作家性を発揮させるのは間違いないでしょう。

 

たしかに『アドアストラ』は一つの作品として点で観ると内省的で非常に不思議な作品です。でも監督の生い立ちからフィルモグラフィーを辿っていき、線で映画を観ると実はジェームズグレイ作品としては通常通りだったと言えるでしょう。

 

 

今回は久々に約1万字の長文になってしまいました。

もっと短く説明できないのか、今後はそこを鍛錬していきます。

 長文読んで頂き、ありがとうございました。

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