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【映画レビュー】『さらば愛しきアウトロー』デヴィッドロウリーが一貫して描く自分の居場所

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今回のブログはロバートレッドフォードの引退作というより、

本作の監督デヴィッドロウリーがまだ商業デビューから4本目で圧倒的なクオリティーを連発していることに注目し、彼のフィルモグラフィの振れ幅とそこにある一貫したテーマを考察してみました。

Dの意志を継ぐものたちの系譜

まずは今回紹介するロウリー監督の年齢に注目してみました。

皆さんの好きな監督でデヴィッドといえば誰が思いつきますか?

自分は高校時代に大ハマリした『セブン』『ファイトクラブ』『ゴーンガール』のデヴィッドフィンチャーが真っ先に思いつきますが、

(1962年生まれ)

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 途中で挫折してしまった『ツインピークス』のデヴィッドリンチ、

(1946年生まれ)

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 『ザフライ』『スキャナーズ』とかもあるけど『ヒストリーオブバイオレンス』が大好きなデヴィッドクローネンバーグ、

(1943年生まれ)

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2000年代にキャリアの中心がある監督たちをみても、

実はまだ『ザファイター』しか見ていないデヴィッドOラッセル、

(1958年生まれ)

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さらに若手のなかでもLAを撮らせれば文句なしの(『スーサイドスクワッド』は触れないであげて!)デヴィッドエアー、

(1968年生まれ)

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このようにデヴィッドは英語圏ではよくある名前であるため名監督にもたくさんいますが、

これらの人物は全員年齢が50代なのに対して今回紹介するデヴィッドロウリー監督は1980年うまれでまだ30代の人物なのです!

 

しかも商業デビューしてから最新作『さらば愛しきアウトロー』までまだ4作しか撮っていない!

見た目のシャレオツ感がすごい

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しかも4作品すべてが傑作!!

どうしても『さらば愛しきアウトロー』は”名優ロバートレッドフォードの引退作”というインパクトが強すぎますが、

僕のような20代の映画好きはこの監督の方に注目しました。

 

 過去3作をざっと紹介

『セインツ 約束の果て』

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filmarksのあらすじ

荒涼としたテキサスの大地に生きる男女の罪を 壮大な映像美で綴った悲劇的な愛の物語。離れ離れになった男女の、約束の果て―。 心に秘め、擦り切れながらも追い求めた本当の「愛」とは…。 

 


セインツ 約束の果て

 

 

もうこの予告編からわかると思いますが、

映像が本当に美しい。

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この映画を観た時に、

大ベテラン監督の映画をレンタルしてきたのはないか?

と感じたのに、まさかのこれが商業デビュー作という抜群の安定感には驚かされました。

 

彼の作品はよくテレンスマリック監督の作品と比較されることがあり、

たしかに基本的に自然光で、マジックアワーや逆光を用いたあの美しい映像は通じていると思います。

とはいえテレンスマリックはカンヌとベルリンを制している監督ですので、

テレンスマリックに似てると商業デビューの段階で言われるのは凄まじい。

 

 

ピートと秘密の友達

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『セインツ 約束の果て』がサンダンスで撮影賞を受賞して、

すぐにディズニーからオファーがきてしまいます!

 

ちなみにこの作品にロバートレッドフォードが出ているというのも、サンダンスつながりの監督と関わりが見えてきますよね。

Filmarksのあらすじ

迷子の少年ピートと、深い森に隠れ住む不思議な生き物エリオットとの奇跡の友情を描く感動作!森の中での二人きりの生活は、毎日がわくわくする冒険の連続。この夢のような日々はずっと続くと思っていた。人間たちに見つかるまでは…

 


映画『ピートと秘密の友達』予告編

 

急にディズニーで子供向け、しかもドラゴンはCGで表現するわけだからデヴィッドロウリーらしさがあるのか?

 

と思うかもしれませんが、

めちゃめちゃデヴィッドロウリーでした!笑

 

逆にですよ、自然光にこだわっているからなのか肝心なドラゴンのCGが少し浮いてしまっている気がしました。。

とはいえ、

森で生活していた主人公の男の子が初めて人間の街にきて、病院から抜け出してひたすら走る場面は映画のルックが急に変わるんですよ。

 

その場面がネット上になかっのですが、あれこれドラゴンの映画だっけ?と思いました。

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『ア・ゴースト・ストーリー』

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もう商業デビューしてから3本目にしてグンッと上限突破しにきた大傑作です!

 

非常に変わった映画でとりあえず2週間で『セインツ』の主演コンビを呼び撮影をして、そこからA24に配給してもらうという規模も小さな作品ですが彼のフィルモグラフィーでは断トツでこれが一番です。

Filmarksのあらすじ

田舎町の小さな一軒家に住む若い夫婦のCとMは幸せな日々を送っていたが、ある日夫Cが交通事故で突然の死を迎える。妻Mは病院でCの死体を確認し、遺体にシーツを被せ病院を去るが、死んだはずのCは突如シーツを被った状態で起き上がり、そのまま妻が待つ自宅まで戻ってきた。Mは彼の存在には気が付かないが、それでも幽霊となったCは、悲しみに苦しむ妻を見守り続ける。しかしある日、Mは前に進むためある決断をし、残されたCは妻の残した最後の想いを求め、彷徨い始めるーー。


映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』特報

これが公開から9か月以上経つのですがBlu-rayの発売が決まっていません。。。。。

ですが北米版なら日本のプレイヤーでも再生できますし、

そもそもめちゃめちゃセリフが少ない作品なので英語字幕でだいぶわかります。

 

今作はですね基本的にオバケになった彼氏が彼女を見守る話なのですが、

話は西部開拓時代から近未来までの間における人間の魂についての物語へと大きく広がっていくのです!!

 

これは先ほど『セインツ』の時に触れたテレンスマリック監督がカンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞した『ツリーオブライフ』に近いものを感じます。

『ツリーオブライフ』もある父子の物語に宇宙誕生から現在までの135億年の物語を重ねていくというものでした。

 

だから『ア・ゴースト・ストーリー』も『ツリーオブライフ』同様にかなり好みが分かれるのは仕方ないかもしれませんが、これは間違いなく大傑作ですので『ツリーオブライフ』がいけたら必見です。

 

 

『さらば愛しきアウトロー

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Filmarksのあらすじ

80年代アメリカ。紳士的な犯行スタイルで、銀行強盗と16回の脱獄を繰り返した伝説の銀行強盗フォレスト・タッカー。事件を追うジョン・ハント刑事は、一度も人を傷つけず2年間で93件もの銀行強盗を成功させた彼の仕事ぶりに魅了され、仕事に疲れるだけの毎日から逮捕へ向けて再び情熱を取り戻す。フォレストが堅気でないと感じながらも、心奪われてしまった恋人もいた。そんな中、フォレストは仲間と共に金塊を狙った大仕事を計画するが——。

 


ロバート・レッドフォード俳優引退作/映画『さらば愛しきアウトロー』予告編

 

この映画もめちゃめちゃ面白い!

 

映画ファンはやはりロバートレッドフォードの引退作ということで、

パンフレットやネット上では過去作との繋がりが紹介されていますが、

 

自分のような20代の映画好きからすると、

ロバートレッドフォードという存在そのものを活かす事で映画から説明を省いている所に目が行きました。

最近のイーストウッド作品とも近いですよね、

キャラクターの過去をあまり説明しなくても、観客は『ドル箱三部作』や『ダーティーハリー』のキャリアをオーバラップさせる効果がありました。

 

そして監督の作品は一貫して足し算ではなく、引き算式で映画を作る、なおかつ説明不足なアート系ぽくはならないため、

名優の引退作として堂々とした風格があったと思います。

 

ちなみにヒロインのシシースペイセクは『キャリー』で有名な女優さんですが、テレンスマリック の監督デビュー作『地獄の逃避行』のヒロインという繋がりもあったりします。

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4作品の一貫したテーマ

これら4作品はどれも撮影などの技術的な面はともかく、

ジャンルやストーリーのテイストがまるで違って、監督の振れ幅を感じます。

 

ですが一貫して自分の(魂の)居どころ、あるべき場所は何かを追求する物語になっていると考えられます。

 

『セインツ』では

娘が生まれるのに自分は何十年の刑務所生活を送らなければならない主人公が脱獄して、家族での逃避行を望む作品でした。

 

父親としての自分が居るべき場所は塀の中なのか?

たしかに社会的には正解だが、

魂の在り方は本当にそれでいいのか?

と。

 

ピートと秘密の友達』では、

森で生活してきた少年は社会的には人間の世界で生きるべきなのです。

だからといって森でのドラゴンとの暮らしは奪われて良いのか?

と悩む姿が描かれました。

 

『ア・ゴースト・ストーリー』では、

突然、交通事故を起こした主人公は成仏することを拒否して、ひたすら彼女のそばにひたすらいるのですが、

次第に

自分は何故ここにいるのか?

人間の魂はどこに消えてしまうのか?

と悩むようになります。

 

そして

『さらば愛しきアウトロー』では、

強盗を生きがいとしてきた主人公が、年をとりシシースペイセク演じるヒロインと出会うことで”そろそろ落ち着いて良いのではないか?”という考えが芽生える話です。

 

 

 さいごに

 ネタバレになるので詳細は伏せますが、

これら4作品では全てにおいて微妙に違う答えが提示されているのが、最大のみどころで常に監督自身が追い求めているテーマに対して模索しているのではないか?と考えています。

 

以上の事からデヴィッドロウリー監督は今後もこのテーマについて異なるジャンルの作品を作り続けることで、いろいろな角度から答えを模索していき、

やがてはその一貫した問いに対する答えを出せた大作が生まれるのではないかと思うと、一映画好きとして楽しみでなりません。

 

長文読んで頂きありがとうございました。

 

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