※このレビューはネタバレを含みます。
スター・ウォーズ/最後のジェダイ MovieNEX(初回版) [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2018/04/25
- メディア: Blu-ray
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監督/脚本:ライアンジョンソン
原作:ジョージルーカス
製作:キャスリーンケネディ/ラムバーグマン
製作総指揮:JJエイブラムス など
音楽:ジョンウィリアムズ
編集:ボブダクセイ
出演者:マークハミル/キャリーフィッシャー/アダムドライバー/デイリジーリドリー/ジョンボイエガ/オスカーアイザック など
先日、DVD/Blu-rayが発売した本作。私は『これまでの概念をぶっ壊し、スターウォーズの世界観を解釈し直した傑作』だと思っています。
が、!!
プリクエル三部作以来のファンの分断が起きましたね。笑
今回のレビューではまず「どのように概念を壊したのか(scrap)」について書き、その後に「どのように再構築したのか(build)」について書きます。
目次:
1.ジェダイオーダーの概念を否定
1-1フォースとジェダイの再定義
フォースとジェダイの再定義そもそも「フォースの調和」とはライトサイドとダークサイドのバランスを意味する事であって、シスが滅べば良いって話ではない。
光100、闇0じゃなくて、50:50が丁度いい。
つまり!
「ジェダイがいる=シスがいる」
ということをルークはレイに説きました。
それを表現しているのが島なんですよ。頂上の空間にはライトサイド、地下の空間にはダークサイドが宿ってる。ジェダイテンプルだからといって、光だけじゃないのです。 よくよく考えればエピソード5『帝国の逆襲』のダゴバもフォースに包まれており、ダークサイドが満ちた洞窟がありました。
てことはですよ、プリクエル三部作の捉え方も少し変わってくるんです。
1-2プリクエル三部作に対する考え
銀河中からフォースの感応者の子供達を連れてきてジェダイにし、ヨーダを筆頭とする巨大なジェダイオーダーが描かれていました。
共和国は最高議長の元で民主主義が敷かれてるのですが、軍事や司法に対して少数のジェダイ評議会がかなり影響を与えていたわけです。
このジェダイを賢者のような振る舞いは奢りだ!偽善だ!と『最後のジェダイ』は解釈したのだと思います。
闇がない共和国時代が理想なんかじゃない!ってことなんですよ。
(劇中では言及されてませんが、プリクエルに出てきたジェダイ聖堂はシス寺院の上に覆い隠すように建造されています。 オク=トーやダゴバとは違い、バランスが取れてない事がわかります。)
だからこそ銀河は”バランスを取るために”アナキンスカイウォーカーという少年を選び、ジェダイオーダーを破壊する事になったのです。
そして生き延びたジェダイも少数となりました。 民主主義的な多数決という方法でシス卿であるパルパティーンが皇帝として選出されたのです。 この選出にはジェダイという少数精鋭の政治組織の関与は全くありません、民衆が闇を選んだのです。
これによりバランスを取るようにシスが力をつけました。 そこで今度は帝国を倒すために次なる選ばれし者としてルークが見出されたわけです。(『反乱者たち』のシーズン3でオビワンはルークこそが選ばれし者だと考えていました。が、ルークが選ばれし者なのかは、賛否わかれます。)
ルークは力をつけてベイダーを改心させた後、ベイダーは皇帝を打ち倒しました。 つまりルークは選ばれ者としての役目を果たし、ベイダーも本来の選ばれし者としての務めを成就したわけです。 つまり『最後のジェダイ』では、 アナキンという存在は何百万年も続いてる歴史の中で、銀河が”バランスを取るために”定期的に見出す者の中の1人に過ぎないとう事を言いたいのだと思いました。 だからルークもその1人なんです。
となると、一旦完結してたエピソード6『ジェダイの帰還』でのルークの頑張りが軽くなってしまいますね。笑
ルークがダメでも時間経てば代打出てくるの? 「じゃあルークが犠牲を払ってまでの頑張りはなんだったの?」ってことですからね。 だから怒る人達がいるのも当然でしょう。 ですがこの考え方じゃないと789の三部作が成り立たなくなると思うんですよ、なぜなら789の三部作には欠陥とも言うべきある問題を抱えているからです。それが「ファーストオーダーとはなんぞや問題」です。
1-3ファーストオーダーとはなんぞや問題
ファーストオーダーはダークサイドではなく小さなテロ組織くらいの設定ならわかりますが、スターウォーズは「光と闇の戦い」ですので、ファーストオーダーをダークサイドと位置づけるには、この解釈を適用するしかないと思います。
これまでの考え方だと「なんでアナキンが皇帝倒したのに、たった30年で平和が崩れるの?」「ダークサイドは1人もいないのに、ファーストオーダーってのはなんなの?」っていう問題が『フォースの覚醒』にはありました。
実際、『フォースの覚醒』は面白いけど「そもそもファーストオーダーって何?」という点は丸投げしてるんですよ。笑
うまい具合にスノークを巨大なホログラムとして表現することで、大きさからビジュアルまで完全にアバウトにしたわけです。
たぶんJ Jは「ルークやアナキンがもたらした調和って30年くらいで崩れるの?」って疑問に正面からぶつかるのは避けたかったんじゃないですか?笑
1-4古い概念の滅却
上記の事を口頭で説明した上で、ルークはとんでもない行為をしました。
「光を闇で覆うべきだ」という偽善と傲慢のジェダイオーダー象徴、”最初のジェダイテンプル”であるオク=トーにある書物を焼き払おうとしたわけです。
すごくないですか??
スターウォーズのこれまで描かれたジェダイが大事にしている概念は間違ってるから燃やしてしまえってことなんですよ?笑
でもその責任をルークを背負わせるにしては重すぎません? そこで共和国千年のほとんどの歴史をみてきたグランドマスターであるヨーダの出番ですよ!!!
ヨーダがフォースで燃やすわけです。
しかもCGじゃなくてパペットなのがもう、接待がやばい!笑
(フォースゴーストなのに落雷を起こすとかできるんだ。。。ってところは、まぁヨーダだからできる!きっとできる!)
逆に「師匠は弟子を超えるべき」とかのセリフだけだったら、ムカつきますよね。 もっとアドバイスするチヤンスは空白の30年でいくらでもあったよね?って。笑
だからヨーダの復活としては最高の形だと思います。 この共和国時代の偽善、傲慢を認めながらグランドマスターがしっかりと向き合う。素晴らしいじゃないですか。 こうやって”燃やす”という直接的な表現で、これまでのジェダイオーダーの概念を焼き払ったライアンジョンソンの意欲を自分は評価します。
2.スカイウォーカー家の神格化の否定
2-1JJらしい挑戦
スターウォーズというシリーズは光と闇の長きに渡る物語であると同時に、「スカイウォーカー家」の物語でした。
ここで大事なのは「普通の家族」ではなく「スカイウォーカー家」に限定していたところです。 エピソード6『ジェダイの帰還』の後に結果としてルークがジェダイオーダーのリーダーとなり、レイアがレジスタンスのリーダーとなっていたわけです。 これこそ、 スカイウォーカー家を賢者、神話の中の神々のように扱っている、過去六部作の古い概念なんですよ! 456を壊さない範囲内で挑戦した J Jらしい設定だと思います。
2-2ライアンジョンソンらしい否定
前述したJJらしい設定をライアンジョンソンは真っ向から否定しました。
そんなにスカイウォーカー家にこだわらなくたって、名もなき呑んだくれの娘レイが選ばれし者になるし、馬小屋の少年も選ばれし者になるんです! とライアンジョンソンは定義したのです。
名もなき者たちの娘!?笑 これは映画館でかなり驚きましたが腑に落ちますよね。 間違いなく J Jはレイをスカイウォーカー家の何らかの血縁者に見えるように描いていましたよね。
例えば『フォースの覚醒』では”アナキンのライトセーバー”が伝家の宝刀として扱われており、ライトセーバーはカイロレンを選ぶのか?それともレイを選ぶのか?という展開が終盤に描かれました。
つまりアナキンのライトセーバーはスカイウォーカー家の血筋を継承していく重要なアイテムであるため、 今作でそれを視覚的に破壊した事は、 「スカイウォーカー家に対するこだわりは捨てろ!」というライアンジョンソンの挑戦的な思いだと感じました。
こうすることでレイに主人公らしい輝きを持たせると同時に「最後のスカイウォーカー家」である悪役のカイロレンに説得力を持たせたんですよね。
次にスカイウォーカー家の血筋を否定したことで変化したベンソロ(カイロレン)の立ち位置についての意見を述べます。
(補足: 否定しながらも、ルーカスの6部作の時からの疑問だった「何でレイアはフォース使えないの?ベイダーの娘だよ?」って問題。まぁジェダイじゃないからってのが答えなんですが、今作でとうとう最大の命の危機にさらされてフォースを使いましたね。笑)
2-3カイロレン
スカイウォーカー家に対する解釈が前作から大幅に変わった事で、末裔であるカイロレンのキャラクターは変化しました。
前作では祖父のダースベイダーオタクであるため重度の傷を負ってる訳でもないのにマスクを着けているコスプレ野郎でした。JJ的には「スターウォーズといえばマスクの敵!」という流れを守りたかったのでしょう。
そして父親であるハンソロの光の誘惑を暴力的に破壊し、レイとのライトセーバー戦で顔にザクッと傷を負わされたことでマスクが本当の意味を持ってしまった。という『フォースの覚醒』はカイロレンにとって闇堕ちのエピソード3のような話でした。
ですがライアンジョンソンはなんとカイロレンの傷の位置を勝手に変えたのです!笑
顔の中央をザックリいったのに、今作では右目あたりに線が一本あるだけなんですよ。笑
Twitterでは「ダサいから」と説明していましたが、理由は他にあると思います。 それは「マスクを脱がせるため」、そこから転じて「ダースベイダーにすがらない自立した悪役にするため」だと思いました。 てかその事を映画の最初にスノークがセリフで言ってるんですよ!笑
「何そのマスク?取れよ!バカ!」みたいに。
ちょっとこれは「レンくんかわいそう。。」と思っちゃいましたね。笑
そこで自分はダースベイダーの孫である以上にハンソロの息子である事を言われて、マスクを破壊してしまうのです。 JJの努力とかをすぐに壊すライアンジョンソンの度胸には感服します。
そして今作でも中々衝撃の「スノークの殺害」という行為に出るわけです。 これはマスクを付けたダースベイダー以下の存在だったのが、殻を破った事でベイダーにもできなかった師匠殺しを行なったのです。
でも「ダースベイダーの孫」というレッテルから解放されても、映画終盤まで「スカイウォーカー家」であるレッテルからは解放されていないんですよね。
ここがこの映画のキーポイントかと。
ルークを倒す→自分が最後のスカイウォーカー家のジェダイ→自分の時代
という「スカイウォーカー家を神格化」した古い考え方に取り憑かれているからです。
(そもそもジェダイって時代劇のジダイからきてるしね)
でも最後にルークに「”最後のジェダイ”なんて存在しない。闇が宇宙に在る限り、誕生し続ける存在がジェダイなんだ。スカイウォーカーの血縁だとは限らない。」と説かれることで、 カイロレンは ダースベイダーの孫でもない、 スカイウォーカー家の末裔でもない、 1人のダークサイドの騎士として自立したわけです。 私はカイロレンというキャラクターは、「前時代的な固定観念の象徴」なんだと思いました。
では今後はどのやうな展開になるのでしょうか?
3.今後のスターウォーズサーガの定義
ライアンジョンソンはルークとヨーダに書物を焼かせて古い概念を焼き払うことで、 スカイウォーカー家の歴史=銀河の歴史 ではなく、 選ばし者たちのアンサンブル=銀河の歴史 だと定義付けたのです。
もちろんこの改変に怒るファンの気持ちもわかります。 でも二番煎じの789の方がよっぽど見たくないスターウォーズですよ!
みんなの好きだったスターウォーズは『ジェダイの帰還』は終わったんです! そこに『フォースの覚醒』で30年前の、みんなの好きなやつの片鱗を見てしまったからこそ、『最後のジェダイ』が受け入れられないんですよ。
だから否定するファンの気持ちもめちゃめちゃわかるんです。 でもそんなんじゃ10.11.12なんか作る前にみんな飽きてしまう。 だからこそ必要な破壊を行なったんだと自分は思っています。 JJエイブラムスはこれまでの型の中で、過去作を越えようとしました。 実際、テイストは456でも色々新しい事を成し遂げたことは間違いありません。 だからこそ789を作るファンからのゴーサインも得られたのだと思います。 私は『フォースの覚醒』を嫌っているわけではなく、むしろ好きな映画に入ります。
そしてライアンジョンソンは映画のエンディングに偉業が詰め込まれていました。
3-1エンディングについて
今作は「スターウォーズの破壊と再生」がテーマでのですで、まずはルークスカイウォーカーの最期を描きました。
エピソード3から始まった彼の人生は農場の赤子から始まり、最期はジェダイマスターとして幕を閉じたわけです。 でも彼の目には、タトゥイーンの農場で見えた二重の太陽が見えている。
監督は過去の概念を破壊してきたものの、ここでスターウォーズ背負ってきたキャラクターに最大限のリスペクトを払ったわけです。
それに続いて、 ファルコン号1隻に収まるくらいに減ってしまったレジスタンスとジェダイとなったレイが描写されました。 そう今作は三部作のうち中間の橋渡し的な作品であるため、「エピソード9は最初から最後まで誰もが見たことないスターウォーズになるぞ!」という素晴らしい終わり方なのです。
これでもう十分エンドロールに入っていいのに、中々入らない。
なんとカント・バイトの馬小屋の少年がフォースを使って箒を手にして、空の(たぶん)ハイパースペースに入る流れ星のような宇宙船を見ながら「僕の人生ここに終わるのかなー」と観ているところで終わる。 まさかの今作はエピソード9に向けての橋渡しのようで、10.11.12の次の三部作に向けた『新たなる希望』まで描いているんですよ!!
とんでもない映画ですよね。笑
お前はこんな田舎で一生を終えない、銀河を股にかけた素晴らしい冒険が待っているぞ。
このルークの二重の太陽を、今の子供達に見せたライアンジョンソンは素晴らしい! 色々と過去作を壊しながらも、スターウォーズの”新たなる”原点を見せつけたのです。 以上の点から自分は『最後のジェダイ』は傑作だと思いました。 大好きな一本です。
ただもちろん、、、
みなさんがいう通りダメなところもあると思います。
4.今作の良くないところ
4-1レジスタンスが馬鹿ばっか
まぁこれ言われたら否定できないですよ。無計画すぎますよね。笑
ホルド中将も黙ってることないじゃん。 このなんかよくわからん理由で指揮系統がおかしいため、クーデターみたいなことも起きたりする。。。 これは納得できない。
4-2アクバー提督の死
いやいやいやいやいやいや、
確かにどんな英雄でも一瞬で死ぬのが戦争なのかもしれません。じゃあ死に方は納得しましょう。だとしてもさ映画なんだからもう少し触れたって良いんじゃないですか? シリーズ最長の152分なんだから。。。
4-3フィンとローズの場面
みなさんの感想などでは、2人のミッションまるごといらないっていう人いますが、それは違うと思うんですよね。
今作は「新キャラたちの短所」を描いているので、ああやって先走って不必要な行動に出てしまうのは良いと思うんです。
だって『フォースの覚醒』のポーに関して言えば、「操縦上手いめっちゃ良いやつ」って情報以外とくになかったじゃないですか。 今回はあえて短所を集中させたのかと。 だとしても、コードブレイカー必要?
DJが実はコードブレイカーでもあったみたいな展開で良いじゃん。 でも馬小屋は少年出さないとエンディング描けないので、あそこは仕方ないかと。
4-4話がなんも進んでない
たぶんスターウォーズ史上もっとも時間が進まない作品でしたよね。 これは『帝国の逆襲』はルークが修行しながらも、ハンとレイアのパートで物語ごどんどん進んでいきました。 つまりレジスタンスパートはもっと展開があればよかったですよね。
4-5ポーグ
あのケアテイカーはわかるんですよ。あの島に仕える種族で、ルークとレイの生活をサポートしてるのをコミカルに描くのは良いことかと。
でもポーグ。。笑
ただかわいいだけ。たぶん監督の絶えずユーモアを入れたいという思いから生まれたキャラクターなのは理解できます。
でもそれならもう少し島との関係性を持たせてもいいんじゃないのかな。。
4-6でも俺はそういう所も好きなんです!
なんというかこうなった原因は、話に捻りを効かせ過ぎているからです。
だから仕方ないじゃないんでしょうか?
あと何故か遅い重爆撃機とか、ずるすぎるハイパースペース特攻などがありますが、 これらは見せ場的に絵図らが新鮮だしかっこいいから別に良いんじゃないですか?
B52がモデルだから遅くてええやん、映画なんだから。 ハイパースペース特攻も今回だけなら良くないですか?もし次回作でミサイル1発ずつハイパースペースで飛んできたりしたら最悪ですが。笑
クレイトの場面なんか本当に美しかったですよね。 靴の裏の塩!?とかいうなよ。 そこも攻めます? って逆に思っちゃいました。
7作も続いてるんだから、それを壊そうとしたら粗が目立ってしまうに決まっています。
ニエンナンとかにも目配せ足りてなかったですよね、でも新キャラを描くことに力入れてるから仕方ない! ってことです。
そして最後に、、
5.エピソード9について言いたい。
こんだけ色々と壊してしまった8の後のストーリーを作るのは中々大変なのか、それとも自由で楽なのかわかりませんが、『フォースの覚醒』のJJにバトンが渡るわけです。 そしてまたエピソード10のライアンジョンソンにバトンが戻るわけですが、 間違いなくJJの当初の想定があったと思うんですね。
だから言いたい、
『JJよ、、
頼むから軌道修正はしないでくれ。。。』
ライアンジョンソンが勇気を持って、スターウォーズを変えてくれたんだから、
レイをスカイウォーカーの血縁にしたり、カイロレンのマスクを復活させてダースベイダーもどきにしないでほしい。
頼むぞ、JJ!
期待してます。
そしてライアンジョンソン!!
最高の映画を使ってくれてありがとう!!
そして長文で、使い方もまだわからないので読みにくくて申し訳ないです。読んでいただきありがとうございました。